大きな山羊と七匹の子山羊

大きな山羊と七匹の子山羊



原作要素ないです

全員動物・おとぎ話の変な話

ヤギ角メルニキがカッコよすぎて前スレの七匹の子山羊クロコダイルネタと混ぜてしまいました⋯

何だか色々特殊です








 昔々、大きな山羊と小さな七匹の子山羊がいました

 大きな山羊は服を作るのが大好きで七匹がメェメェどんな服が着たいか話すたびに願いどおりの物を仕立てて見せるのでした

 草食動物なのに駱駝と鰐の名前を持つ、変な山羊でした




「クロ、クロ」


 大きな山羊が名前を呼ぶと机の下やカーテンの裏、あちこちから小さな山羊が飛び出してきます

 1番小さい子山羊がカーペットに置かれた大きなマントから顔を出して皆が揃った事が分かるとキャメルはひとりひとりの顔を順番に見ながら言いました

 

「近くの山に狼が出たんだって」


 それを聞いて七匹の子山羊はまたか。と思いましたし、実際に1番上の子山羊は

「またか。いいかげんにしろ」

 と怒って睨みつけましたがキャメルはワクワクしながら言います

「でもほら、きっと強いよ。ね?」

 細長く横に伸びた瞳孔を持った瞳は広い視野で便利ですがキャメルはそれを逃げる為ではなく強い獣と戦う為に使っていました

 子山羊の服を切るのに振るう鋏は時折こうして強い者と戦う為に振るわれていたのです

「隣の山の猿くんに先越される前に狩りに行かなきゃ」

 真ん中辺りの子山羊はもう勝手にすれば良いと諦観していましたが1番上の子山羊は違いました

 もし負けてキャメルが死んだら自分達はどう暮らせというのか。どうでも良いのか⋯⋯子山羊なんて本当はもう邪魔なのかと、そんな考えになる度に顔の古傷がズキズキ痛むのでした

「メシは?」

 そう言ってキャメルの袖を引っ張ったのは下から2番目の子山羊です

 彼の瞳だけは爬虫類の鰐と同じ、縦に長い瞳孔を持って産まれてきました。キャメルは「間違えちゃったの? 可愛いねクロは」とニコニコ笑ってすましてしまったので重い問題にはなっていませんが


 そんな事より子山羊を全員クロと呼ぶ方を問題視してほしいと思う1番上の子山羊でした。おかげでおい、とかなあ、とかお互いの名前を呼ばないままここまできています。ダメな夫かなにかでしょうか

 何故かキャメルがクロ、と呼ぶと的確にその子山羊が振り返るのに子山羊がクロコダイル! と呼ぶと全員が自分の事だと思い反応するか自分ではないだろうと無視するかでした 

 苦し紛れに1番上の子山羊は上から順に番号で呼んでいましたがそれで何か用?と反応するのは大きな山羊だけです。何なんだこいつと怒りたくなったのは今回が初めてのことではないのでした


 ただこの話の中ではあまりにも不便なので上の子から順番に番号で呼ぶのがやはり無難なのでしょう。そんな訳で6番が改めて話しかける場面に話は戻ります


「メシは?」

「一日で見つかったら良いけど噂の狼は野良らしいから見つけるのは簡単にはいかないかもね」

「ええ⋯⋯」

 不満気な6番に1番はそのままもっと強く止めてくれないものかと思いましたがそのまま引き下がったので心の中で舌打ちしました

 そこに3番目の子山羊が最近つけた義手代わりの鉤爪を振り回して言います

「能力者なのか?」

「そうだって噂だよ」

「会ったらどんなだったか教えろ」

 ワクワクした様子の3番を無視して1番は2番を見ましたが

「諦めろ」

 と吐き捨ててロリポップを舐めるだけ。1番目の子山羊はそれでも挫けません。諦めたらそこで試合終了の心持ちで窓辺に座っている4番目の子山羊の下へ行きます

「お前まだ服作り終わってもらってないよな?」

「⋯⋯別に帰ってきてからで良い」

 指輪を弄りながら4番はどう聞いても拗ねている声で返すと

「行き先行ってから出かけるようになっただけ良いだろ。別に困らないし」

 と付け足しました


 実際、キャメルがいない事は何度か有りましたが駱駝のショコラが必ず残って狩りや買い物に付き合ってくれますし自分で身の回りのことができる子山羊達にとってキャメルという山羊の存在はそれほど重要ではありません

 

 重要ではないけれどこんな行動繰り返されたら困るし帰って来るタイミングが悪いとご飯の量が足りなくなるしショコラが持てない荷物もあるし仕立て途中の服があるし時々包帯まみれで帰ってきてとにかく⋯⋯とにかく⋯⋯

 1番目の子山羊はそんな事をグルグル考えて、でもなにも言い返せないまま。山羊は荷物をまとめていきます

「お土産何がいい?」

「トマト」

 5番目が読書をしながら答え、6番目は

「じゃあ肉」

 と諦めたのか倉庫の食料リストを確認しながら答えます。どうやってもこの凶暴な草食動物は止められない

 1番目の子山羊はヘタリと耳を後ろに寝かせて


「メエ」


 その鳴き声に珍しく全員が反応しました

 カーペットの上で山羊のマントを涎塗れにして遊んでいた7番目、末っ子の子山羊に視線が集まります


 7匹の兄弟の中で最も小柄なのに誰より立派な角を持つこの子山羊は今まで声を発したことはありませんでした

 いつまで経っても無言なことに対して

「まだ喋りたくならないんだねえ。声どんなかなあ」

 とご飯を食べさせ添い寝して第一声を心待ちにして過ごしていた山羊はこのまさかの事態に飛び上がり荷物を放りだしました

「喋った! ほらクロ可愛い声だよ!」

「おれらと同じ声だろ」

「メェメェ」

「!⋯⋯メ⋯⋯私の事?!」

「鳴き声だろ」

「鳴き声だよ」

「鳴き声だな」

「医者行けよ」

「嬉しい」

「聞けよ」

 何時もなら一度に入るツッコミにも1人ずつに返すはずが驚きで反応できていません。大きな山羊が抱っこをすると7番は頭をグリグリ押しつけて

「メェ~」

 と一際高く鳴きました。それに山羊はパチパチと瞬きを繰り返して、そうしてフッと笑みをこぼしました


「分かった。じゃあ行かない」

「え!!!」


 1番目の子山羊は思わず声を上げ周囲もポカンとしたり尻尾を振ったりします

 それもそのはず今まで思いついたら即行動で最近やっと事前告知するように躾けたもののその意思は曲げることのなかった草食とは名ばかりの甘味食獣があっさりと意見を変えたのですから当然の反応でしょう

「やめるのか」

「喋ったお祝いしなきゃね」

 なんだよ行かないのか、早く服作って、などと下の子山羊達が鳴き出すのに一々返事をしていくのを眺めて

「ああ⋯⋯お祝いな」

 何だかグッタリしてしまった1番に2番は肩を叩いて一言

「もっと適当に流せ。疲れるだけだ」

 とアドバイスを残すと外のショコラに食事を運びに行ってしまいました


 

 1番目の子山羊はその日、お祝いのトマトシチューを大きな山羊にも無理矢理出すことでその日の鬱憤を晴らすことにしたのでした













 







──

書く時に使用(すると思ったが特に使わなかった)メモ



①1番メルニキと付き合いが長いが自信が無いし兄への信用が足りないのでよく不安にかられてる。1番幼少期好感度ダイスに近い。顔に傷がある


②ピアスをつけている。葉巻を吸いたいが大人になるまではメルニキと同じ飴で我慢を強いられている。アニキはそういう生き物だと割り切って勝手にさせている


③片手が無い。最近フックという名の鉤爪をつけてメルニキくらい強くなるのが目標。メルニキは誰にも負けないという謎の自信を持っている


④指輪をつけてるお洒落な子山羊。メルニキへのリクエストが1番多くて細かい。色々言いたい事はあるが口には出せないでいる


⑤銃を持ってよく狩りにショコラを付き合わせている。メルニキが死んでも生きていけるしなんの問題もないだろうと思ってる


⑥鰐の目を持った子山羊。メルニキを餌と服持ってくる人、くらいの認識でいるので死なれると困ると思ってる


⑦末っ子で喋れない。獣の方に近い角が1番大きい。常にメルニキかメルニキの私物の傍にいる

⇒メェと鳴ける様になった。本能のまま喋る正直者。成長するとヤバい。



メルニキ山羊

子沢山




六匹は一度も「行かないで」と言ったことはない

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